真田の六連銭(六文銭)

今年2016年の大河ドラマは「真田丸」、主人公は真田信繁(真田幸村)です。
真田信繁の名前については、以前「真田幸村という名前」で紹介させていただきました。

今回は、「真田の六連銭(六文銭)」について、お話してみたいと思います。

六文銭六連銭(むつれんせん)・六紋連銭(ろくもんれんせん))というと、真田氏を思い浮かべる方は多いと思いますが、他にも海野氏、禰津氏、望月氏、安部氏、中村氏が使用しています。

真田氏の先祖は、清和天皇の流れをくむ繁野氏とされています(確証はありません)。繁野氏は信州小県(ちいさがた)に勢力を持つ氏族で、それがやがて、海野氏、禰津氏、望月氏の三家に分かれます。そして、真田氏の源流が海野氏とされています。

本姓である滋野氏の家紋は「月天七九曜」であったとされ、繁野氏から、海野氏、禰津氏、望月氏が分かれる際、海野氏に「月輪七九曜」、禰津氏に「九曜」、望月氏に「月輪七曜」が与えられたとされています。
その後、海野氏が「六連銭」に、禰津氏が「丸に月」改めたのと同様に、望月氏も望月という名称自体が満月を意味することから、中央の星(満月)を八星が囲む「九曜紋」、六星が囲む「七曜紋」に改めたとされています。

真田氏の「六連銭」も本家の海野氏からの継承ではないかといわれています。

「六連銭」は、いわゆる仏教に言う「六道銭」のことで、死者を埋葬するとき棺の中に入れる六文の銭(副葬品)のことです。死者が「三途の川」を渡るため、または「六道」に一文ずつおいていくために必要と考え、死者に「六道銭」を持たせるのです。

ちなみに、「六道」とは、仏教の世界における、地獄(道)・餓鬼(道)・畜生(道)・修羅(道)・人間(道)・天(道)の六つの世界(道)のことで、これらをあわせて「欲界」といい、その上に「色界」、さらに上に「無色界」があり、「輪廻転生」というのは、人間などの生物が、この三つの世界(道)で無限に生死を繰り返すという考え方です。

かつての武将たちは、「六連銭」を掲げることで、戦場にあっても死を恐れない、いつでも死ぬ覚悟はできている、という強い意志を表したのではないか、と言われています。

ちなみに、真田信繁の生きた時代の真田家の家紋は「六連銭」ではありません。真田家の家紋は「結び雁金」という紋で、戦時のときに「旗印」として「六連銭」を掲げていたそうです。

結び雁金

<「結び雁金」の由来>
雁(かり、がん)は、群れをなして空を飛ぶことから、絆の強さを象徴する鳥とされています。「結び」については、中国の故事に由来しています。漢の武帝の時代、使者として匈奴(きょうど)へ使わされた将軍・蘇武(そぶ)は囚われ、北の無人の地に移されます。そこに囚われている間、蘇武は南にある漢の方向へ渡っていく雁の足に、自分が無事であることを書いた手紙を結びます。やがて19年に月日が流れ、武帝の子・昭帝(しょうてい)が射止めた雁の足に蘇武からの手紙を見つけたことで、蘇武は救出され漢に戻ります。このことから雁は「幸せを運ぶ鳥」、また他にも「先祖との文を運ぶ鳥」とされ、家紋に採用されていると考えられています。

ドラマなどで、大坂の陣で真田信繁が「六連銭」の旗を掲げて戦うシーンが描かれますが、実際、信繁はこのとき真田の紋を使っていなかったようです。これは、徳川方の兄、真田信之への気遣いであったともされています。

また、このときの信繁の軍の、武具一式を赤で統一した「真田の赤備え」は有名ですが、「赤備え」で最初に戦ったのは武田氏であり、その武田氏の流れを汲む者であることを意識したものと言われています
ちなみに、このとき信繁が使った旗印は「総赤に金線」でした。

「総赤に金線」の旗印
(「大坂夏の陣屏風」をもとに管理人クロトが作成したので、多少異なる部分があると思います)

ちなみに、死者に持たせる六道銭、このお話を聞いたとき、私は以前見たアメリカ映画「フロム・ヘル」(From Hell)で、ジョニーデップ(Johnny Depp:John Christopher “Johnny” Depp II)演じる主人公が、「天国へ行けるように」と死者の両まぶたの上に硬貨を置くシーンを思い出しました。

で、少し調べてみました。

死者にお金を持たせる風習を「冥銭(めいせん)」といい、この風習は世界各地にあるようです

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ギリシャ神話では、冥界のことを「アイデス(冥王)の館」と呼ぶそうです。

その「アイデスの館」にたどり着くまでにはいくつかの難関があり、まず冥界の入り口付近に「ステュクス」(憎悪、嫌忌の川)、「アケローン」(アコス=嘆息、悲嘆の川又は沼)、「コーキュートス」(号泣の川:死者のための哀悼、死の随伴物)、「レーテー」(忘却の川:亡者が前世を忘れるために飲む)、「ピュリプレゲトーン」(火で燃えている川:火葬のもがり火)の五つの川があるとされています。

死者達は、冥府を下る時には必ずこの川を渡らなければなりません。
冥府の川の渡し守はカローンで、1オボロス(6円~10円くらい)を取り立て、死者たちの川渡しをします。なので、ギリシャの人々は、死者を埋葬する際、口の中へこの硬貨を入れていたそうです。
私が映画で見た「両まぶたの上の硬貨」は、この風習が遠方に広がる中で、少しずつ姿を変えていったものなのでしょうね。

人の死生観、死者への思いは、世界共通の思いなのだということを教えてくれた、「真田の六文銭」でした。

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