今は戦国時代が人気ですね。
以前は五月人形といえば源義経さんの大鎧が主流だったのに、今は戦国時代の武将のものが人気のようです。
武具の発展は悲しい戦の歴史でもありますが、芸術の歴史でもあり、非常に文化的価値の高いものです。
私は平安時代に発展を遂げた大鎧が、世界で最も美しい甲冑だと思っています。
でも、甲冑はレプリカでも高いし、何より大きくて置く場所にも困ります。でも義経さんの甲冑欲しいな、、、五月人形を一年間飾っておくわけにもいかないし、何か小さなフィギュアで、しかも精巧なものはないかな――とネット検索を繰り返し、見つけたのがこれ。
国宝 赤糸威大鎧(竹虎雀飾)(プラモデル:童友社)
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これは、童友社がつくっている春日大社(かすがたいしゃ)(奈良県)所蔵「国宝 赤糸威大鎧(あかいとおどしおおよろい)竹虎雀飾」のプラモデルで、本物は春日大社宝物殿で管理されています。
源義経(みなもとのよしつね)が春日大社に奉納したと伝えられていますが、実際は鎌倉期~南北朝期の作品のようです。
その豪華絢爛さ、華やかさから「義経が奉納した」と語られるようになったようで、さすが義経さんです!!
実際はどなたが奉納されたのでしょうね?
「赤糸威大鎧-竹虎雀飾」は、冑や胸板に竹や雀の透かし彫りが施され、表面は茜染めの絹糸を組紐で編んで仕上げられ、両袖には虎と竹の金色装飾があり、その豪華さでは日本一の鎧といわれています。
実物の写真がこちらです。
Armour laced with red threads With bamboo, tiger, sparrow motif; nomination includes the helmet; said to have been dedicated by Minamoto no Yoshitsune; one of two similar armours at Kasuga-taisha 1185 Kamakura period Ō-yoroi , Kasuga Taisha Shrine, Nara, Japan. Licensed under “Public domain”, via Wikimedia Commons.
本当に美しいです。
何時間でも何日間でも、何週間でも見ていられます、、、
実際私が購入したものはプラモデルなのですが、しかしこれが結構本格的なのです。(値段もかわいくありません。。。)
各パーツは、「赤糸」を通し繋げていきます。(もちろん接着剤の箇所も多いです。)
写真があまりよくありませんが、、、
正面の写真がこちら。
背面の写真がこちら。
大袖には、竹と虎、そして、上下には雀の金細工が施されています。
雀の細工は至る所に施されており、全部で96羽いるそうです。
甲冑を紐で結ぶ場合、上の写真のような「総角(あげまき)結び」が基本です。(これについては後述します。)
弦走(つるばしり:鎧正面の腹面を覆う部分)や蝙蝠付韋(こうもりづけかわ:下写真箇所の箇所)などは、シールを貼るようになっています。プラモデルを作ることで、こういった細かい部分まで知ることができます。
細かい細工が至るところに施されており、国宝「赤糸威大鎧-竹虎雀飾」の桁外れの豪華さを知ることができます。
吹返(ふきかえし:下写真、兜左右の大きくカーブしている箇所)にも雀がいます。
ちなみに、向かって右側の吹返には藤と桐の細工が施されており、こちらは春を、そして、左側の吹返には桐と蔦の細工が施されており、こちらは秋を表現しているといわれています。
兜の背面、しころ(後頭部から首まわりにかけて保護する箇所)は、本来であれば赤い紐を通し繋げていくのですが、このプラモデルでは、プラスチックです。ただ、これ、赤いパーツを一つ一つ貼り付けていくんですよ。
完成したプラモデル「赤糸威鎧(竹虎雀飾)」は、床の間に大切に飾っています。
甲冑の結び方は「総角(あげまき)結び」が基本です
雛人形や五月人形で、兜や冠の紐が解けてしまったら、ついリボン結びをしてしまいがちですが、これは大きな間違いです。
主に甲冑等で使用される結び方は「総角(あげまき)結び」と呼ばれるもので、これは平安時代に発展した結び方といわれています。
総角結び
「総角」とは、古代から平安時代にかけての未成年男子の髪型の一つで、角髪(みずら(美豆良))ともいい、髪を左右の耳の上で丸く結い上げたもので(神話の神様のイメージです。)、これから考案された結び方といわれています。
この「総角結び」には、「入形(いりかた)」 と「人形(ひとかた)」の二種類があり、結ぶ時には上下が逆になります。
「入形」には財宝や幸福等が入ってきてほしいという願い、「人形」には生命を脅かしたり不幸になるものは入ってこないようにという願いが込められているそうです。
そのことから、「入形」は、神社、相撲、花魁の髷等で使用され、「人型」は武具等で使用されます。
どうですか?
プラモデル一つで、これだけのことが勉強できます。
甲冑には時代により様々な種類があり、呼び方も異なり、、、
と、これについてお話しすると、さらにとんでなく長くなりますので、甲冑の歴史については、次回「日本の甲冑の歴史(ざっくりと)」でお話しさせていただきたいと思います。