ハワード・ヒューズの場合

強迫性障害に苦しんでいる有名人は多いです。

サッカー界の英雄デビット・ベッカム(David Robert Joseph Beckham OBE)、アメリカの歌姫クリスティーナ・アギレラ(Christina Aguilera)は、全てのものが偶数でなければ気が済まない、物が規則正しく置かれていないと気が済まない、そして、それをまっすぐに並べたり完璧な形に直したりするのに何時間もかける等の症状があり、強迫性障害(不完全恐怖)であることを公表されています。

女優の遠野なぎこさんは、IHコンロ、ドライヤー等から火災が発生するのでは?という強迫観念から、例えそれらを数日間使用していなくても、IHコンロが冷たいか、コンセントが抜けているか、一日何度も確認を繰り返す、また、スカートがめくれていないか何度も確認する、こういった確認行為を繰り返す強迫性障害であることを公表されています。

歴史上では、偉大な芸術家ミケランジェロ(Michelangelo di Lodovico Buonarroti Simoni)は、自分なりのライフスタイルをもっており、それを乱されることを嫌ったといいます。(彼の場合、この症状はアスペルガー症候群、高機能自閉症によるものだとする見方もあります。)
発明家ニコラ・ステラ(Nikola Tesla)は、極度に潔癖症だったともいわれ、ホテルでは大量のタオルを要求し、さらに「3」という数字へのこだわりが非常に強く、ホテルでも3で割り切れる部屋番号を常に要求していたそうです。
日本では、幕末の国学者平賀元義は不潔恐怖だったと考えられ、口や体を洗うのに消毒剤等を使用していたといわれています。
もちろん当時は「強迫性障害」という精神疾患の概念はありませんので、本当に彼らが強迫性障害だったのか、それとも、ただ「こだわりが強い人」だったのかはわかりません。
前に「潔癖症と強迫性障害」という記事でも述べさせていただきましたが、性格と病気は全く違うもので、はっきりと区別しなければいけません。極度にこだわりの強い人を勝手に「あの人は強迫性障害だ」と決めつけるようなことは、この病気への偏見に繋がると思うからです。

あと、誰でも知っている超有名人(?)、それは――猫。
強迫性障害は人間だけでなく、動物ではネコなども発症し、毛繕いを頻繁に繰り返したりすることがあるようです。
これを聞くと、本当に「脳の病気」なのだと思います。

そして、強迫性障害の有名人として特に有名なのが、ハワード・ヒューズ(Howard Robard Hughes, Jr.)(1905年12月24日 – 1976年4月5日)ではないでしょうか?

映画「アビエイター」(The Aviator)は、ハワード・ヒューズの生涯を描いたアメリカ映画で、2004年公開、主演はレオナルド・ディカプリオ(Leonardo Wilhelm DiCaprio)です。「アビエイター」とは「飛行機の操縦士」のことです。

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私は、この作品を一番症状が酷い時期に見ました。夜一人ベッドで泣きながら観たものです、、、(不潔恐怖の私はレンタルはできせんので、購入して見ました。)

初めてふと「小さなことが気になる」瞬間、そして、それが徐々に悪化していく様子、その時の彼の精神の苦悩、本当によく描けていると思います。

ハワード・ヒューズはアメリカの実業家で、「資本主義の権化」「地球上の富の半分を持つ男」等とも評されるほどの超大富豪。それでいて超超超イケメンで、世紀のプレイボーイ。

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幼い頃から、父親が不在がちだったこと、父方の遺伝による難聴、母親の異常なまでの潔癖症などが要因で、内向的な性格になっていったといわれています。

そして、幼い頃から映画製作者、飛行家になりたいという夢を抱いていた彼は、史上初の航空アクション映画「地獄の天使」を製作、映画は1930年に公開され、大ヒットします。

1935年、航空機製造会社、ヒューズ・エアクラフト社を設立します。1937年には、自らの操縦によりニューヨーク – ロサンゼルス間を7時間29分25秒で飛行、当時のアメリカ大陸横断記録を樹立しました。1938年にはわずか91時間で世界一周飛行を行い、こちらも当時の最速記録となりました。

また、彼は映画制作の傍ら、キャサリン・ヘプバーン(Katharine Houghton Hepburn)などのハリウッド女優やセレブリティ達と楽しく遊びます。

華麗で誰もが羨む人生。
しかし、彼の精神は、次第に病に蝕まれていきます。

彼の強迫性障害は、幾度かの飛行機事故による脳の損傷が原因ともいわれています。もちろん、母親の潔癖症等、育った家庭環境も影響していると思います。

彼は極度に細菌を恐れるようになり、徐々に症状は悪化していきます。
そして、1966年にネバダ州のラスベガスにある有名なカジノホテル、デザート・インを買収し、完全に除菌された最上階のスイートルームから殆ど外出しなくなります。
私と同じ「回避」行動です。

ドアノブを除菌されたハンカチで覆わないと触れない、手を洗い始めると肌が擦り切れ血が出てもその行為をやめることができない、次第に彼は、手の洗浄や入浴が一切できなくなったとも言われています。自分の強迫行為からも回避するようになってしまったんですね。こうなると、ほんと、何もできません。このような「強迫行為からの回避」という行動は、健康な方には理解が難しいかもしれません。強迫行為というのは、それだけこの患者にとって辛いものです。

そして、彼は息を引き取ります。70歳でした。
190cmあった身長は薬物乱用のため10cm以上縮み、体重はわずか42kgだったといいます。その容貌から医師、親族がヒューズと判定できず、FBIによる指紋照合により本人と確認されました。

人口の約2.3%は、人生のある時点で強迫性障害を経験すると言われています。そして、年間の患者数は全世界では約1.2%程度とされ、症状に差はあるものの、100人に1人は強迫性障害の症状を持っていることとなります。そんなに少ない数ではないですよね。

現在強迫性障害の症状に苦しんでおられる方、身近にそういう方がいらっしゃる方、この記事を読み、ハワード・ヒューズという人物に興味を持たれた方、もちろんレオナルド・ディカプリオが大好きな方、
彼の空と飛行への情熱の人生を、169分間一緒に過ごしてみてはいかがですか?

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