最近はテレビでも「潔癖症」のタレントが自分の潔癖行為を語り、周りの人たちを驚かせたりしていますね。
この人たちは強迫性障害なのでしょうか?

ここでは、いわゆる世間一般で言う「潔癖症」と「強迫性障害」について、私の考えを綴りたいと思います。

そもそも「潔癖症」というのは医学用語ではありません。
「潔癖」という言葉は、過度の綺麗好きのことを表現することもあれば、正しくない行いを嫌う性格のことを表現することもあります。

強迫性障害の症状は、本人が自分でも「不合理な、つまらない、ばかばかしい考え(強迫観念)」だとわかっていながら、「洗浄する、確認する、整頓する」等の強迫行為を繰り返すものです。その強迫行為には精神的な苦痛を伴います。本人はやりたくてやっているのではない、ただ、やらずにはいられないのです。

世間では極度の綺麗好きの方もいらっしゃいます。例えば、その方は少しの汚れを許すこともできなくて、毎日時間をかけて綺麗に掃除をします。そして綺麗になった状態に満足する。この方の場合、「掃除をする」という行為はごく日常の行為であり、精神的な苦痛は一切感じていない、とします。
これはこの方の性格であって、病気ではないですよね。

性格と病気は違います。
これははっきりと区別しなければいけません。

潔癖症なら部屋も綺麗なんだろうね、なんて思う方もいらっしゃるかもしれませんが、確かに「綺麗好き」な方の場合、部屋は綺麗でしょう。
しかし、強迫性障害は病気です。洗浄強迫、不潔恐怖に悩む方は、いわゆる目に見える汚れもそうですが、観念的な汚れを恐れることも多いのです。

私の場合、「職場では汚れる」という強迫観念があります。言っておきますが、私は事務職です。職場はごく普通のオフィスで、基本デスクワークです。しかし「職場は汚れる」という観念があり、そして、家、特に自分の部屋は聖域です。職場の汚れ、穢れを自分の聖域に持ち込みたくない、こういった感情で、私はとても苦しみます。症状が酷いときは、職場で着ていたものを毎日洗濯し(それも複数回洗濯機を回します)、職場から帰った自分が触れたであろう箇所を全て除菌ウエットティッシュで拭きまくります。そして、お風呂に入り、その日の汚れ、穢れを落とす。そうして、やっと自分の部屋、ベッドに入ることができるのです。その後は、職場で触った物、外出用の鞄等には一切触れることができません。そして翌朝、私はまた職場へと出かけ、帰宅し、同じ行為を繰り返します。泣きながら手を洗ったり、体を洗ったりした日も多いです。
休日は私にとって安らぎの日です。職場で触ったものに一切触れるわけにはいきません。

床に落ちている髪の毛、これは、今自分が落としたものだろうか、それとも、職場から帰った私がお風呂に入る前に落としたものだろうか?後者だとすれば、休日にそれを触ることはできません。そして、「回避」行動をする私は、「はじめからそれに触れない」という行動をとります。

いわゆる一般的な「綺麗好き」の方の場合、落ちている髪の毛を何も考えずに拾い、捨てますよね。ごく普通で自然な行為です。そこに複雑な思考は働きません。しかし、私はそれができないのです。

当然、部屋は散らかっていきます。
ここに、世間一般の方から見て「なんで潔癖症なのに部屋が汚いの?」という矛盾が生じます。

ちなみに、今の私は汚部屋に暮らしているわけではありません。
強迫性障害との自分なりの付き合い方がわかってきた私は、掃除は職場に行く前にします。職場へはどうせ汚れに行くのです(あくまでも私の感覚です)。しかし帰宅後はお風呂に入るまでは自分の部屋に入れない。お風呂に入った後は職場の物が置いてあるエリアに近付けない。
なので、朝、職場に行く前に掃除をします。最初はベッドまわりからはじめ、出かける直前に職場の物が置いてあるエリアを掃除し、出勤します。

「綺麗好き」な性格と、強迫性障害による洗浄行為は、全く違うものです。
例えば、「綺麗好き」な方が、周りから見て異常とも思えるほど掃除をし、それを他人に強要したとします。しかし、これはこの方の性格であって、いくら周りに迷惑をかけていても、いわゆる「強迫性障害」ではないのです。(他の病気である可能性は否定しませんが、、、)
「強迫性障害」の場合、「洗浄する」という行為には精神的な苦痛を伴います。そして、私のように「触れない」という「回避行動」をとることもあれば、周囲に綺麗にすることを強要する「巻き込み」という行動をとる方もいらっしゃいます。

この二つは、一見似ているようで、全く違うものです。
この「一見似ている」というのが、この強迫性障害への理解が得られにくい要因の一つなんですよね。

繰り返しますが、性格と病気は区別しなければいけません。

冒頭での問、テレビで潔癖症を語るタレントたちは強迫性障害なのか?
これは、もし本人がやりたくてやっている場合その方の「性格」ですし、その行為を精神的な苦痛を伴い、「本当はやめたい」と思いながらも繰り返している場合は、「強迫性障害」の可能性があります。

人によって違うと思いますが、私にとって、彼らがテレビで異常とも言える自分の潔癖行動を語ってくれることは、正直ありがたいです。
私は周りから見て変人です。病気を周囲に公表していない私の行為は、変にこだわりが強く、奇怪なものです。
しかし、テレビで彼らが語ってくれることで、「そういう価値観の人もいるんだ」という理解が広がってきたと思います。もちろん性格による行動と病気による行動は、その根本が違いますが、「自分の家に入る時は玄関で着替えます」と彼らがテレビで語ることで、「こういう人もいるんだな」という理解が広がります。なので、私の行為もそういった行為の一つと思ってもらえることもあるでしょう。
ただ、同じ病気で苦しむ方で、こういったタレントの言葉に傷ついていらっしゃる方も多いのでは、とも思います。

強迫性障害は、本当に周囲に誤解を与えやすい病気です。
強迫性障害の患者は、自分が病気からくる症状に悩まされていることをひたすら隠し、普通に振る舞おうとします。

私は、強迫性障害の症状に苦しむ方たちが、少しでも気持ちが楽になり、自分らしい生き方を考え、前を向いて進むことができるようになることを、心から願っています。