「墓マイラー」という言葉をご存知ですか?

「墓マイラー」という言葉をご存知ですか?
「歴史上の人物や著名人のお墓を巡り、故人の足跡に思いをはせる人」のことを、「墓マイラー」と言うそうです。

これは江戸時代からあった文化で、その人たちは「掃苔家(そうたいか)」と呼ばれて(名乗って?)いたそうです。「掃苔」というのは、その文字のとおり墓石についた苔を掃い清めることで、つまりお墓参りのことです。そして、歴史上の人物や著名人等、自身の尊敬する人のお墓参りをすることも「掃苔」と呼び、それを趣味とする人のことを「掃苔家」と呼び、高尚な趣味とされていたそうです。

今も昔も、人は変わりませんね。

現代の「墓マイラー」ですが、ネットでいろいろ調べてみると、守るべきルール・心得というものもあるようです。
・大人数で行かない、騒がない、汚さない、長居をしない
・お墓にあるものを持ち帰らない
・寺社等である場合、まずは御本尊にお参りをし、宗派を尊重する
・立入りが禁止されている場所には入らない
・御子孫の方への配慮を忘れない

全て当たり前のことですね。
私たちが普段お墓参りをするのと同じ心構えで、歴史上の人物のお墓参りをする必要があるということです。

私は史跡巡りが好きなので、自然と歴史上の人物のお墓へ行くことも多いのですが、そのとき、いつも気になります――「この下に御遺体はあるのだろうか?」と。「御遺体がある」ということは、その方が確実に存在していた、私たちと同じように生活をされていた、ということを、強く感じることができるような気がするからです。

埼玉古墳群(さきたまこふんぐん)の桜(埼玉県)

歴史上の人物で、御遺体や御遺骨の発掘調査がされた方は多いです。
・奥州藤原氏4代(藤原清衡、基衡、秀衡、泰衡)
・伊達政宗
・石田三成
・増上寺の徳川将軍家墓地に埋葬された将軍家の人々

さらに阿武山古墳(あぶやまこふん-大阪府)の調査では、そこに葬られている方の御遺体と副葬品等から、とても高貴な方とみられ、また記録に残る藤原(中臣)鎌足の特長とよく似ていること、彼が葬られたとされる場所に近いこと等から、「藤原(中臣)鎌足のお墓では?」と有力視されていますが、確定はされていないようです。

その他にも、調査されていなものもありますが、俊寬とみられる骨、大塔宮護良親王とされる首、豊臣秀吉とされるミイラ、豊臣秀頼とみられる首、、、、等々、、、
「される・みられる」というものを含めれば、少なくはありません(かなり怪しいものも多いですが、、、)。

築土神社(東京都)では、御神体として平将門の首とされるものが祀られていましたが、これは東京大空襲で焼失してしまいました。

日本のお墓には、御遺体、御遺骨、御遺品等を納める墳墓と、御霊を祀る供養塔とがあります。
古いものになれば、どちらかわからなくなるんですよね、伝説はいろいろと多く語られるし。

しかし、そこに祀られている方と祀ってきた方の思いを敬い、むやみな発掘調査をしないのも、日本らしい良いところだと思います。
ええ、正直、知りたいですよ。いろいろ調査すれば、いろいろわかるのに、、、なんて思ったりします。

しかし、昔の人が大切にお祀りしてきた場所にはそれなりの意味があり、また、そこには、どなたかが安らかにお眠りになっておられるのです。
「知りたい、調べればわかる」ということも大切ですが、こういった、昔から大切にされてきた方々の思いもとても大切です。時代は変わっても、思い・信仰は受け継がれていきます。

お墓は、今も昔も、故人を思い、故人と静かに語る場所です。
歴史上の人物のお墓へ行くときは、「史跡巡り」というよりも「お墓参り」という気持ちで、静かにお参りしたいと思います。

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