自分よりも美しい人と出会ったとき、みなさんはどうしますか?
見惚れる?
自分も頑張って綺麗になろうと思う?
打ちのめされる?
嫉妬する?
今回紹介する映画は、2000年公開のイタリア映画、「マレーナ(Malèna)」です。
「マレーナ」は、美しシチリアを舞台に、12歳の少年が、美しい大人の女性、マレーナに抱く恋心を描いたイタリア映画で、主演は、絶世の美女にしてイタリアの至宝、モニカ・ベルッチ(Monica Bellucci)様。2000年に公開され、アカデミー撮影賞、アカデミー作曲賞にもノミネートされた名作です。
シチリアの美しい景色
シチリア・タオルミーナにあるギリシャ劇場(Il Teatro Greco)
舞台は1940年代、第二次世界大戦中のイタリア・シチリア島
美しい景色の中、戦争という現実を生きる人々
夫が戦争に行ってしまい、一人で生活するマレーナ
美しいマレーナが街を歩くと、男たちは動きを止めてじっと見惚れ、
女たちは、そんな男たちへの複雑な感情を嫉妬と侮蔑の眼差しに映し、マレーナを見つめます
そんな大人たちの卑しい感情と眼差しに気づきながら、ただまっすぐに、純粋にマレーナを思い続ける少年
この映画は、美しいシチリアを舞台に、12歳の少年の初恋を描くと同時に、マレーナという美しい女性を巡り、 人々の集団心理が引き起こす愚行、嫉妬、そして羨望といった人間の醜い本質を、とてもリアルに描いています。
映画を見る人たちは、マレーナという女性に心を寄せ、レナートという少年の純粋さに心打たれながらも、村人たちが見せる醜さの中に、嫌でも自分を見つけてしまうことでしょう。
映画の最後で、大人になった少年が語ります。
「あれからいろいろな恋をして、いろいろな人と付き合ったが、みんな忘れてしまった。ただ、あの人、マレーナのことだけは忘れたことがない」
初恋ですね。
最後のこの言葉で、この物語がさらに魅力的なものとなります。
シチリアの美しい景色の中で、少年の初恋をコミカルに、情景たっぷりに描きながらも、人間の残酷さ、あさましさ、醜さ、そして美しさを描いたこの作品は、間違いなく名作です。
皆さんは、集団の中で、酷く自分が劣っているような感覚に陥ることはありませんか?
仕方ありません。人は、人との関係の中で生きているのですから、どうしてもその中で優位な位置に立ちたいと思うものです。
そしてその感情が、向上心――勉強を頑張る、練習に励むといったプラスのエネルギーにつながることも多いです。
ただ、それでもなかなか結果が出ないとき、どうしようもないほどの劣等感に苛まれることもあります。人がうらやましく、妬ましく感じるときだってあるでしょう。
ただ、どんな状況にあっても、感情や周囲の人たちの悪い雰囲気に流されることなく、品格ある行動を心掛けたいものです。
余談ですが、「マレーナ」というのは、聖人「マグダラのマリア(Maria Magdalena)」(イタリア語で「マリア・マッダレーナ」(Maria Maddalena)」)に由来する名前です。
「マグダラのマリア」が娼婦だったかどうかは見解がわかれますが、「罪深い女」であるが「キリストにより救われた」というイメージは強く、この映画の「マレーナ」は「マグダラのマリア」を強く意識したものなのかもしれません。
ちなみに、モニカ・ベルッチはキリストの受難を描いた映画「パッション(The Passion of the Christ)」(2004年公開)でも「マグダラのマリア」を演じています。
「マグダラのマリア」を題材とした絵画は多いですが、私はこの絵が一番好きです。これは、イタリアのルネッサンス初期の画家カルロ・クリヴェッリ(Carlo Crivelli)の作品で、現在アムステルダム国立美術館に所蔵されています。
Licensed under “Public domain”, via Wikimedia Commons.