私は呪われているのではなく、病気だったのだ。
自分のこれらの症状は、「強迫性障害」という病気の症状で、自分だけが苦しんでいるのではないのだ。
それがわかったことは、とても大きな一歩でした。
しかし、それがわかったところで症状が改善するわけではありません。
私はあいかわらずの強迫観念にとらわれ、あいかわらずの強迫行為を繰り返していました。
そういう生活が続き、少し気持ちが落ち着いた頃、やっと「病院に行ってみよう」という気持ちになりました。
本当に症状がひどいときは、病院なんて考えもつきませんでした。また、誰にも相談していなかった私は、病院にいくことを誰かに勧められるということもなかったのです。
しかし、どうしても精神科というのは恐ろしく感じれら、私は心療内科を探し、ある病院に行きました。
(強迫性障害の専門は精神科です。最近はメンタルヘルス科等という言葉を使う病院もあり、以前に比べ通院しやすくなっていると思います。本来心療内科というのは、心身症という心理的な原因によって身体に症状が現れる病気を対象とするところです。ただ、その境界が曖昧な病院も多いです。きっかけはどこでもいいと思います。大切なことは、必ずお医者さんの指示に従うということです。ネットではいろいろな情報があふれていますが、日々様々な症状と向き合い、研究・勉強を続ける専門家であるお医者さんに敵うものはありません。また、ネットで集める情報だけだと、どうしても独り善がりな考え方に陥っていくものです。)
先生は、とてもいい方でした。じっくりと私の話を聞き、やさしくいろいろな事を教えてくださいました。
問題は、私の方にあったのです。
本当にしんどくてしんどくて助けを求めて病院に行ったのに、私はヘラヘラと笑いながら、「強迫性障害だと思うんですけど~」「あ、でも、普通に生活はできてるんで~、もっと症状のひどい方だと普通の生活もできなくなるみたいで、でも、自分はまだ普通の生活ができてるんで~」等と軽く話し、自分の本当の姿、弱みをお医者さんに見せることはありませんでした。そして、薬をもらって帰る。その繰り返しでした。
こんなことで良くなるわけがありません。精神的な病気というのは、本当の自分の姿、弱みを全てさらけ出し、お医者さんとの信頼関係の下、一緒に治療方法を考え、一緒に目標に向かって治療していかなければ、治るものではありません。
私はひたすら自分の姿を隠し、適当にお医者さんと会話をし、ただただ薬をもらって帰っていました。
もちろん頭ではわかっています。今度行くときは、もっといろいろなことをお話しよう、そう思うのですが、いざ先生を目の前にすると、ついヘラヘラ笑い、適当な話へと逃げてしまうのです。
そのうち、私は病院に行かなくなります。
そして、一人勝手に一つの結論にたどりつきます。
この病気は治らない、一生つきあっていくんだ、と。
もちろんお医者さんの適切な指導の下、根気よく治療を続ければ、治らない病気ではないと思います。
強迫性障害の治療は、薬物療法と認知行動療法の併用が効果的だと言われています。
この病気は、脳内伝達物質であるセロトニンの機能異常であることがわかってきています。なので、薬の服用によりセロトニンが正常に作用するようにする。と同時に、この病気はその人が抱える不安が大きな要因となっているため、その不安を取り除いていく治療を行います。これが認知行動療法です。
例えば、何かに触れた気がして手を洗いたくても、それをひたすら我慢する。もちろん強烈な不安が襲ってきます。それでもひたすら耐えるのです。そうすることで、少しずつそれが平気な状態へとしていきます。間違った思考回路を少しずつ軌道修正していくのです。
これはとっても危険な治療なので、必ずお医者さんの指導の下行ってください。でないと、逆に症状が悪化することもあります。私がいい例です。
ただし、私は卑怯にも自分の本当の姿を隠し、向き合うことをせず、自分一人で勝手に答えを出したのです。
この病気は治らない、一生つきあっていくんだ、と。